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大阪地方裁判所 平成4年(ワ)5082号 判決 1994年8月30日

大阪府箕面市新稲六丁目一六番三八号 グリーンヒル二〇二号

原告

寺田茂

右訴訟代理人弁護士

菊池逸雄

奈良県橿原市曽我町三二番地二

被告

株式会社日本ホーミング

右代表者代表取締役

加藤修身

右訴訟代理人弁護士

朝沼晃

安野一孝

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

一  被告は原告に対し、金一七七二万九一六〇円及び内金一一二二万二七四〇円に対する平成四年六月一日から支払い済みまで年六分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

第二  事案の概要

一  原告の特許権

1  原告は、次の特許権を有する(争いがない。以下同特許権を「本件特許権」といい、その発明を「本件発明」という。)。

発明の名称 木質建造物の軸組構造並びに軸組部材の接合方法

出願日 昭和四九年八月六日(特願昭四九-八九九八一)

出願公告日 昭和五七年八月一一日(特公昭五七-三七七三九)

登録日 昭和五八年五月一二日

特許番号 第一一四六三一三号

特許請求の範囲

「所望の柱間隔に対応する長さで継手を有せず、両末端に近接してボルト締め孔を有し、心部に木繊維方向にボルト孔を有し、両末端の両側面に直角に上面から下面に及ぶ縦方向の切欠をつくることによつて、上面から下面に亘る断面矩形の縦長の突起部を有する軸組部材、即ち土台、軸桁及び梁が上記ボルト孔の対応位置に木繊維方向と直角方向にボルト孔を有し、両末端及び中間部位に上記軸組部材の断面矩形の突起部に対応する形状並びに大きさの1~4個の切り込みを有する柱部材を介して、両締めボルトでナツト締めすることにより、接合されていることを特徴とする土台、軒桁並びに柱よりなる木質建造物の軸組構造。」(別紙特許公報〔以下「公報」という。〕参照)

2  本件発明の構成要件

本件発明の構成要件は、以下のとおり分説するのが相当である(甲一二)。

(一)(1) 所望の柱間隔に対応する長さで継手を有せず

(2) 両末端に近接してボルト締め孔を有し

(3) 心部に木繊維方向にボルト孔を有し

(4) 両末端の両側面に直角に上面から下面に及ぶ縦方面の切欠をつくることによって、上面から下面に亘る断面矩形の縦長の突起部を有する

軸組部材(土台、軒桁、梁)が

(二)(1) 上記ボルト孔の対応位置に木繊維方向と直角方向にボルト孔を有し

(2) 両末端及び中間部位に上記軸組部材の断面矩形の突起部に対応する形状並びに大きさの1~4個の切り込みを有する

柱部材を介して

(三) 両締めボルトでナット締めすることにより接合されていることを特徴とする

(四) 土台、軒桁並びに柱よりなる木質建造物の軸組構造

二  原告と被告の特許使用許諾契約の締結

1  原告と被告は、昭和六二年一月五日、本件発明につき、「特許権の製造及び販売実施権設定契約」と題する契約(通常実施権許諾契約)を締結した(甲六。以下「第一契約」という。)が、第一契約においては、実施料は、土地及び外構工事を除く住宅契約金の二パーセントと定められていた(争いがない。)。

2  原告と被告は、その後、第一契約を改訂し、実施料について、以下のとおり定めた(甲一。以下「本件契約」という。改訂の時期を除き争いがない。)。

(一) 昭和六二年一月から同年一二月まで毎月二〇万円宛

(二) 昭和六三年一月から同年一二月まで毎月二二万円宛

(三) 昭和六四年一月から平成元年一二月まで毎月二四万二〇〇〇円宛

(四) 平成二年一月から同年一二月まで毎月二六万六二〇〇円宛

(五) 平成三年一月から同年一二月まで毎月二九万二八二〇円宛

(六) 平成四年一月から同年一二月まで毎月三二万二一〇〇円宛

(七) 平成五年一月から同年一二月まで毎月三五万四三一〇円宛

(八) 平成六年一月から同年一二月まで毎月三八万九七四〇円宛

(九) 平成七年一月から同年一二月まで毎月四二万八七一〇円宛

(一〇) 平成八年一月から同年一二月まで毎月四七万一五八〇円宛

三  被告から原告への金員の支払

被告は原告に対し、昭和六二年八月ないし一一月の各末日及び同年一二月二八日に各二〇万円、昭和六三年一月三〇日に一九万九六〇〇円、同年二月二九日に三四万九六〇〇円、同年三月三一日に三四万九二〇〇円、同年四月ないし六月末日、同年八月一日、同年九月一日、同月三〇日、同年一〇月三一日、同年一二月一日及び同月二九日に各二三万九六〇〇円を支払った(争いがない。ただし、支払の趣旨については後記のとおり争いがある。以下「本件給付」という。)。

四  請求の概要

被告が、平成元年一月分以降本件契約に基づく約定実施料を支払っていないとして、平成五年一二月末日までの実施料合計金一七七二万九一六〇円及び内金一一二二万二七四〇円(平成四年五月分までのもの。)に対する平成四年六月一日から支払い済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を請求。

五  争点

本件契約は合意解除されたか。

第三  争点に関する当事者の主張

一  被告の主張

1  合意解除に至る経緯

本件発明の実施許諾契約は、元来、昭和六〇年六月に、原告と、被告会社の前代表取締役中井直人(以下「中井」という。)個人との間に締結されていたものであるが、中井が被告代表取締役となったのを機に、原告と被告の間の契約に切り替えられ、第一契約が成立したものである。

その後、被告会社の代表取締役が中井から現代表取締役加藤修身に交替したが、その際、加藤修身が原告に対し実施料の値下げを求めたのを機に、昭和六二年四月一四日、第一契約を改めて本件契約が締結された。

ところが、中井は、同じく被告会社の取締役であった齋藤眞宣(以下「齋藤」という。)と共に被告から独立して別会社(株式会社近畿ホームビルダー。以下「近畿ホームビルダー」という。)を設立することになっていたので、本件契約の締結直後のころ、中井は、被告に対し、本件発明を近畿ホームビルダーで使用したい旨申し出てきた。当時被告において本件発明の技術内容を知得している者は中井と齋藤の両名しかおらず、右両名が独立した後は、被告において本件発明を実施することはできず、またその予定もなかったし、もともと本件発明の実施権は中井個人が取得していたものを、中井らが中心となって被告会社を設立したので、便宜被告が実施権者となっていたという経緯があるから、被告も右申し入れを了承した。

そして、被告代表者加藤修身が、昭和六二年四月末ころ、原告に対し、本件契約の解約を申し入れ、原告もこれに応じたので、本件契約はこの時合意解除された。

なお、本件発明については、右合意解除直後の同年五月五日、原告と中井の間において「特許権の製造及び専用実施権設定契約」と題する専用実施権設定契約が締結された(乙四。なお、乙四では契約名義人は原告と近畿ホームビルダーとなっているが、この時点では同社は未だ設立されていないから、実質的な契約者は中井個人である。)。そして、同契約においては、実施期間の始期が昭和六〇年六月(原告と中井が本件発明について初めて実施許諾契約を締結した時期)と明記され、実施料が本件契約と同額の一か月二〇万円とされていることから、原告と中井は、本件発明の専用実施権は、昭和六〇年六月以来一貫して実質的には中井個人が有しているものであることを相互に確認したこと及び本件契約が合意解除されたことがわかる。

2  本件給付の趣旨

(一) 被告は、昭和六二年四月ころ、原告が勤務していた株式会社ロコシステム(以下「ロコシステム」という。)から建築CADシステムを購入し、その使用方法等について原告から指導を受けたことをきっかけとして、本件特許権に関係なく被告独自の新しい工法(木造軸組においても鉄骨造と同じ様な構造で柱と梁を接合させる工法。以下「新工法」という。)を開発することを企図し、原告に技術顧問としての協力を依頼したところ、原告もこれを承諾し、原告と被告は、同年八月三日、顧問契約を締結し、同年八月から被告が原告に対し月額二〇万円の顧問料を支払うことになった。右顧問料は昭和六三年二月分から月額二四万円に増額されたが、同年二月分、三月分については後に述べる事情により各三五万円を支払っている(なお、昭和六三年六月三〇日以降のものについては、振込手数料を控除したものが振り込まれている。)。このように、本件給付は、本件契約に基づく実施料ではなく、別に契約された顧問料として支払われていたものである。

(二) 原告は、被告との顧問契約に基づき、新工法の開発研究に従事していたのであり、原告が被告の顧問としてした主な対外的活動は左記のとおりである。

(1) 昭和六三年一月三一日、新工法による柱、梁の接合部の基本形モデルの製作。なお、本件給付の中で、昭和六三年二月二九日及び同年三月三一日に支払われたもののうち各一五万円相当は、右モデルの作成費用を顧問料と合算して支払ったものである。

(2) 同年三月一五日、建設省、日本建築センター評定部住宅課訪問に被告代表者と同行し、同課主任と面談し接合方法に関する建築基準法上の問題についての調査を行なった。

(3) 同年五月、被告の学園前展示場に職業訓練大学の講師を招いて行なわれた新工法の確認及び勉強会に参加した。

(4) 同年六月二二日、京都大学農学部木質科学研究所における新工法の強度実験に立ち会った。なお、右実験は被告が右研究所に依頼して行なったものである。

(5) 同年九月二六日、大阪見本市会場における大阪木工機械展において新工法のモデルを出展するについて、展示品の製作、展示について指導した。

(三) ところが、原告は、顧問料を支払って新工法の開発を依頼した被告を無視して、大阪見本市会場における大阪木工機械展において新工法のモデルを展示した際、新工法の開発者として自己の名のみを掲示し、さらに、長江貞彦(以下「長江」という。)と共同名義で新工法の開発研究の成果を雑誌に発表したため、被告は原告に不信の念を抱くようになり、原告と新工法を共同で開発することを断念し、原告との顧問契約も昭和六三年一二月末日をもって解消するに至った。

3  被告が本件発明を実施していないことについて

(一) 本件発明の特徴

本件発明の構成は前記第二の一2のとおりであり、本件発明の特徴は、

(1) 土台、軒桁、梁などの軸組部材が全て柱間隔に対応した長さに裁断されている(三本以上の柱を貫通する長尺の軸組部材を用いない。)こと

(2) 柱部材の両末端及び中間部位に軸組部材両末端の突起部に対応する切り込みを有している(柱部材の両末端に在来工法では通常用いられる〓〔ほぞ〕がない)こと

(3) 柱部材と土台、軒桁、梁などの軸組部材との接合が柱部材を介して、専ら軸組部材の両末端で行なわれる(軸組部材が全て柱部材の周りで接合され、柱部材が軸組部材の中間部で接合されることはない。)こと

(4) 軸組部材は全て継手を一切使用せず、両締めボルトによって接合固定されること

にある。

(二) 被告の軸組構造

被告は、近畿ホームビルダーに工事を下請負させたものを除き、在来工法によって建築しており、その軸組構造は本件発明の構造と全く異なっている。その詳細は次のとおりである。

(1) 軸組部材(土台、軒桁、梁)の構成

両末端に継手又は〓を有し、部材の多くは中間部に柱部材や他の軸組部材との接合用の〓穴や蟻などの仕口を複数有している。

(2) 柱部材の構成

両末端に〓を有し、通し柱については中間部に梁や軒桁の〓に対応する〓穴が設けられている。

(3) 軸組部材と柱部材との接合方法

<1> 土台との接合(別紙図面(一))

基礎の上に設けられた土台と柱部材の接合は土台の中間部上面に穿たれた〓穴に柱部材の末端に形成された〓を挿入して接合する(但し、土台末端部においては蟻落としの方法により接合することもある。)。

<2> 梁との接合(別紙図面(二)、(三))

梁部材の中間部の下面に穿たれた〓穴に柱部材の末端に形成された〓を挿入して接合する(但し、通し柱の中間部において梁と接合する場合は後記の(5)<2>のとおりである。)。

(4) 軸組部材同士の接合方法

<1> 土台と土台の接合(別紙図面(五))

土台と土台を接合する場合は、一方の土台の末端に形成された雄蟻を他方の土台の末端に形成された雌蟻に挿入する蟻継手(腰掛蟻継手)の方法により接合する。

<2> 梁と梁の接合(別紙図面(六)、同(二))

梁と梁を木繊維方向に接合する場合は一方の梁の末端に形成された雄鎌を他方の梁の末端に形成された雌鎌に挿入する鎌継手の方法により接合する(但し、梁と梁を直角方向に接合する場合は後記(5)<1>記載のとおりである。)。なお、別紙図面(二)は柱位置での接合状態を表しているが、柱位置以外での接合も基本的には同様である。

被告が実施している工法の軸組構造は右のとおりであるから、全ての土台や梁が継手を有さず、その末端部分において、末端部分に切り込みを有する柱部材を介して接合される本件発明の構造とは全く異なっている。

(5) 被告の軸組構造におけるボルト締めについて

被告が実施している軸組工法においてボルト締めを行なっているのは、

<1> 梁と梁を直角に接合する場合(別紙図面(二)。梁A材の一方の末端に近い部分の下面にボルト締め孔を穿ち、木繊維方向にボルト孔を設け、そのボルト孔の対応部分に木繊維方向に直角にボルト孔を設けた梁B材〔なお、場合によっては柱部材にボルト孔を設ける場合もある。〕を蟻継手で接合させた上、補強金物のボルト締めにより固定する。)

<2> 通し柱の中間部において、梁と接合する場合(別紙図面(四)。末端部に〓が形成され、末端に近い上面及び下面にそれぞれボルト締め孔を設けた梁を、右ボルト孔に対応する部分にそれぞれ〓穴及びボルト孔を設けた通し柱部材を〓で接合したうえ、補強金物のボルト締めにより固定する。)

のみであるから、柱部材及びその他の軸組部材間の接合が柱部材を介し専ら軸組部材の両末端で行なわれ、しかもボルト締めが接合の要(接合金物)となっている本件発明とは構造が全く異なっている。被告の工法においては、接合は〓、蟻などの仕口によって行なわれ、ボルト締めはあくまでそれを補強するためのものでしかない。

なお、右接合を補強するためのボルト締めは、原告の考案によるものではなく、在来工法において用いられている公知の技術である。

<6> 原告が被告の工事現場を撮影した写真(検甲号証)についてみると、検甲三、四、六、七、八、一〇はいずれも前記(5)<1>(別紙図面(二))のボルト締め孔を撮影したものであり、検甲九ないし一一の写真はいずれも前記(5)<2>(別紙図面(四))のボルト締め孔を撮影したものである。また、検甲三、四、九、一〇の写真をみると、被告の実施している工法においては軸組部材である梁と梁が柱部材を介さずに直接接合されていることが、検甲五、七、八の写真をみると、被告の実施している工法においては梁の中間部において柱部材が接合されていることがわかる。

(三) 甲一三の作成経緯について

原告は、甲一三パンフレットに本件発明を使用した工法の記載があることをもって、被告が本件発明を実施していると主張する。

右パンフレットは、本件契約が合意解除された後の昭和六二年六月ころに発注したものであるが、ここに本件発明を使用した工法の記載があるのは以下の理由による。すなわち、近鉄奈良線学園前駅そばにあった被告のモデルハウスが、建築当時は代表取締役が中井であった関係上、本件発明を使用した工法を用いて建築されたものであり、住宅展示場にも「オーセント」という商品名で届出、表示されていたこと、当時、被告が受注した工事について本件発明を使用した工法により工事をする場合は専用実施権者である近畿ホームビルダーに発注する予定にしていたこと、当時中井が被告会社に在職中であり、被告において昭和六二年五月二八日と同月三〇日受注した工事について、近畿ホームビルダーに発注していたという事情から、中井が代表取締役であった当時に発注しモデルハウス完成に合わせて作成したパンフレット(乙一六)に使用した活字、写真、コピー(広告の見出しや文章)の一部をそのまま流用して作成したためである。

被告は近畿ホームビルダーとの取引もなくなり、本件発明を実施する見込みもなくなったので、甲一三パンフレットの次に作成したパンフレット以降は本件発明に関する記述は一切削除している。

二  原告の主張

1  合意解除の不存在

加藤修身が、原告に対し、第一契約に定められた実施料の値下げを求めたことから、本件契約が締結されたのであるが、本件契約が締結された時期は遅くとも昭和六二年四月までである。

被告は、本件契約締結当時、被告において本件発明の技術内容を知っている者は中井と齋藤の両名しかおらず、右両名が独立した後は、被告において本件発明を実施することはできず、またその予定もなかったと主張するが、本件発明は軸組構造に関するものであるから、大工が理解すれば実施できるのであり、加藤修身が右のように実施料の値下げを申し入れたのも、本件発明の内容を知り、その後も使用することを前提としてのことであることは明らかである。

原告と近畿ホームビルダーは、昭和六二年五月五日、本件発明について専用実施権設定契約を締結し(乙四。なお、乙四作成当時近畿ホームビルダーは未だ設立されていないが、実質的には活動を開始していた。)、近畿ホームビルダーは昭和六三年七月二七日から実施料の支払いを開始したが、このような事実関係があったからといって、被告主張の合意解除が認められるものではない。乙四の契約は専用実施権の設定となっているが、近畿ホームビルダーの代表者中井は、第一契約や本件契約の存在を知っており、それについて異議はないのである。

なお、被告は、本件発明に関する実施権は、実質的には一貫して(第一契約成立以前から)中井が有していた旨主張するが、原告は、被告会社設立以前には、中井が勤務していた丸栄産業に本件発明の実施に必要なプレカット材木を販売していただけであり、中井あるいは原告において、本件発明についてことさら実施契約を締結する必要はなかったから、右主張は失当である。

2  本件給付の趣旨

被告は、本件給付は、本件契約とは関係なく、顧問料として支払われたものであると主張するが、単なる顧問料として月額二〇万円以上の金員が支払われるはずがない。また、原告は、被告が顧問契約が成立したとする昭和六二年八月ころは、ロコシステムに勤務しており、顧問として被告会社に出社することは不可能であった。

被告は、顧問契約の内容につき、被告が本件発明に関係なく被告独自の新工法を開発することにつき、原告に技術顧問としての協力を依頼したものであると主張する。しかし、右新工法は、被告には関係がなく、原告の発明にかかるものである。そもそも原告は、本件発明をはじめとして、柱と柱、柱と梁の接合に関して、数々の工法を発明しているが、被告のいう新工法も、本件発明と同様、軸組構造に関するものである。原告が、新工法につき、昭和六三年六月二七日に特許出願をし、平成四年六月五日には出願審査請求をしているのに対し、被告代表者が、本人尋問において新工法について自分に権利があるわけでないことを認めていることからも、新工法が原告が独自に開発したものであり、原告に権利が帰属するべきものであること、したがって、その開発に被告が顧問料を支払うはずがないことが明らかである。

被告は、原告が、大阪見本市会場における大阪木工機械展において新工法のモデルを展示した際、被告を無視して自己の名のみを掲示したというが、その展示は被告がしたのではなく、株式会社菊川鉄工所(以下「菊川鉄工所」という。)がしたのである。なお、その際、新工法について、特許出願中であることが明示されていた。また、被告は、原告が長江と共同して新工法開発研究の成果を雑誌に発表したことを非難するが、新工法が原告の発明である以上、何ら非難されるいわれはない(この論文の末尾に株式会社インターナショナルサーキュラーコーポレーションの湯川淳二への謝辞が述べられているのに、被告の会社名が出てこないのは、被告が新工法に関与していないことを示している。)。この新工法に関与したのは、発明者である原告のほかには、株式会社インターナショナルサーキュラーコーポレーションと、株式会社サン・エス・ケイである。したがって、被告が原告に不信の念を抱くようになり、原告との顧問契約を解消するということもありえず、結局、そもそも顧問契約なるものが存在しないことが明らかというべきである。

3  被告が本件発明を実施していることについて

(一) 被告は、昭和六二年一〇月末日、被告の販売促進用にパンフレット「オーセント」(甲一三)を作成して広告宣伝に使用した。このパンフレットには、本件発明に対する特許番号が記載され、その内容も「木材の特性を最大限に生かしたこの理想的構法の採用で、今までの木造建築では考えられなかった強度を実現。耐震性・耐久性が大幅にアップしました。」と説明されている。被告は、このような記載によって、被告の建設する住宅「オーセント」の特徴の第一に、本件発明の使用を指摘して宣伝広告をしているのであるから、被告が本件発明を実施していたことは明らかである。また、被告は、本件発明の工法により建築したモデルハウスについて、建築途中をビデオ撮影しており、そのビデオは、下請工事業者に対する研修のために用いられているし、本件発明を実施した建築工法は模型化され、平成三年ころに同工法を宣伝するものとして展示されていた。このように本件発明を使用した工法をパンフレットに記載し、ビデオで放映し、模型で展示していたことにより、本件発明を使用した工法により建築することが、顧客と被告の契約内容に含まれていたということもできる。これらは、被告が、工法において下請工事業者(工務店)より上位にあることを下請工事業者に印象づけるためにされていたことである。

(二) 被告は、甲一三パンフレットは、被告が本件契約が合意解除されたと主張する昭和六二年四月末日より後の同年六月ころに発注したものであることを認めながら、種々言い訳的主張をするが、右パンフレットは、被告代表者が自らコピーに手を入れて全く新たに作成したものであり、その作成開始時期は、被告が本件合意解除があったと主張する昭和六二年四月末より後であるし、掲載されている写真のうちのいくつかは、被告代表者が同道して昭和六二年九月二二日に撮影されており、デザインや原稿が作成されたのは同月二四日であり、印刷されたのが同年一〇月三一日である。このような経緯をみると、昭和六二年五月二八日及び同月三〇日に契約済みの工事を近畿ホームビルダーに下請負工事の発注をしていたことと、右パンフレットの作成は無関係であることは明らかである。そして、右パンフレットの作成費が八六万円、印刷費が九〇万円に及ぶこと、パンフレットの部数が五〇〇〇部にもなること、パンフレットの頒布が橿原展示場(平成二年竣工)でもされていることをあわせ考えると、モデルハウスとわずか二件の受注工事に本件発明を使用した工法が用いられたから右パンフレットに本件発明を使用した工法を掲載したという被告主張は不合理である。

第四  争点に関する判断

一  本件契約に至る経緯

証拠(甲一、六、一二、乙一ないし四、九、一六、原告本人、被告代表者)によれば、以下の事実を認めることができる。

1  原告は、高知県で材木業を営み、プレカット工場を所有して、昭和四〇年代後半から、右材木業が倒産した昭和五七年まで、本件発明の実施に必要なプレカットした材木等を販売していた。

中井は、昭和五〇年代前半ころは丸栄産業に勤務していたが、本件発明の紹介番組がNHKで放映されたことから、これに着目し、以後、原告は、丸栄産業に本件発明の実施に必要なプレカット材木を何回か販売した。

2  被告会社は、昭和六一年一一月六日に設立されたが、設立当時の代表取締役は中井であった。原告は、そのころ中井と再会し、中井が本件発明を実施して木造注文住宅を建築することに意欲を示したので、原告と被告は、昭和六二年一月五日、第一契約を締結した。なお、被告会社において、当時原告ないし本件発明とつながりがあったのは、中井だけであった。

原告は、第一契約が締結されたころ、被告会社において本件発明を実施するうえでの工事技術の指導をしたが、原告から直接指導を受けたのは、中井と齋藤のみであった。そして、中井と齋藤は、本件発明すなわち「木質建造物の軸組構造並びに軸組部材の接合方法」を基本に、建物を完成するまでの手順などに工夫を加えた工事法を一応完成し、これを「TM構法」と名付けた。

3  被告は、昭和六二年四月一二日、近鉄奈良線学園前駅近くにモデルハウスをオープンしたが、このモデルハウスには本件発明やTM構法が用いられていた。中井は被告代表者としてこのモデルハウスのオープンに向けて乙一六ちらしを作成したが、このちらしにはモデルハウスの特色が六項に分けて論じられ、その第二項に「2 耐震性・耐久性を飛躍的に向上させた特許工法採用。(特許番号第一一四六三一三号)オーセントは、日本建築の伝統構法である軸組構造に斬新なアイデアと建築ノウハウを加えた「日本ホーミングTM構法」(工法特許)を採用。今までの建築では考えられなかった強度を実現しました。」という本件発明とTM構法を宣伝する文言(ただし両者が明確に区別されているわけではない。)が記載されていた。なお、同文言の下部に「架構体図面」が掲示されているが、同図は本件特許出願願書添付図面第3図と相違しており、本件発明の実施状況を示すものといえない疑いがある(継手を有する疑いがある。)。

4  加藤修身は、被告会社の設立当初から、被告会社の親会社から、中井にかわり代表取締役に就任するように指示されていたところ、昭和六二年一月ころから中井に親会社の意向を伝え、中井もこれを了承して同年三月三〇日に代表取締役を辞任し、交替に加藤修身が被告会社の代表取締役に就任した。

被告代表者加藤は、昭和六二年三月、中井から第一契約の契約書を見せられたが、本件発明の実施料が住宅契約金の二パーセント(ただし土地及び外構工事は除く)と定められているのは高額に過ぎると判断し、同年四月一四日ころ、原告と交渉し、第一契約を改め、本件発明の実施料を定額にした本件契約が成立した。

二  原告と近畿ホームビルダー名義の専用実施権設定契約

本件契約後、昭和六二年五月五日付けで、原告と近畿ホームビルダー(代表者は中井)名義で、本件発明について専用実施権設定契約が締結されている(乙四)。右専用実施権設定契約において、本件発明の実施期間は昭和六〇年六月から一五年間とされ(第二条)、実施料については、初年度より毎月二〇万円、二年目から原告と近畿ホームビルダーの協議のうえ別途決定するものとされ(第三条第一項)、また、「第九条(TM構法等の所有権)甲(裁判所注・原告)の発明した木質建造物の軸組構法を採用し乙(裁判所注・近畿ホームビルダー)が開発したTM構法及びべ夕基礎工法、土壁工法、インテリアホームクリエイションシステムは乙の所有権とする。」との規定がある。なお、実際に近畿ホームビルダーが実施料の支払いを開始したのは昭和六三年七月二七日からである(甲三の3、原告本人)。また、近畿ホームビルダーの設立は昭和六二年九月二五日である(乙二)が、中井が被告代表取締役を辞任したころから、近畿ホームビルダーの設立準備を進め、同人が近畿ホームビルダー名義で営業活動を開始していた(原告本人、被告代表者)。

三  本件契約後の状況

証拠(甲一三、一四の1ないし5、一五、乙一〇ないし一三、一五、一六、一九の1、2、二〇の1、2、二一ないし二四、検乙四、原告本人、被告代表者)によると、以下の事実が認められる。

1  被告は、昭和六二年四月一一日、当時原告が専務取締役として勤務していたロコシステムからCADシステム「技」を五〇〇万円で購入し、以後も原告から右CADシステムについて技術上の指導を受けていた。

2  中井、齋藤らは、中井が被告会社の代表取締役を辞任したが、未だ被告会社の取締役として在籍していたころから、近畿ホームビルダーの設立の準備を進め、被告代表者もこれを了解していた。

3  被告は、昭和六二年五月二八日に受注した建物建築工事請負契約について、同年一〇月一二日ころ、近畿ホームビルダーと下請負契約を締結した(なお、昭和六三年三月八日に追加発注がある。)。下請負契約の代金は、昭和六二年八月、一〇ないし一二月の各末日、昭和六三年一月三〇日、同年二月、三月、五月、六月の各末日に支払われた。

被告は、昭和六二年五月三〇日に受注した建物建築工事請負契約について、同年一〇月一二日ころ、近畿ホームビルダーと下請負契約を締結した。下請負契約の代金は、同年八月、九月、一一月の各末日、同年一二月二八日、昭和六三年一月三〇日、同年二月、三月、五月の各末日に支払われた。

被告代表者加藤は、当初は、近畿ホームビルダーと業務提携して、被告が営業活動を中心に行い、近畿ホームビルダーに工事を下請負させる予定であったが、結局、近畿ホームビルダーと下請負契約を締結したのはこの二回だけである。それは、被告のモデルハウスが奈良県にあり、顧客も奈良県の者が多いのに対し、近畿ホームビルダーは、主たる営業圏が三重県の名張市や伊賀上野市であり、中井が名張市に、齋藤も三重県阿山郡伊賀町に居住しているなどの事情があったことから、奈良県における被告から下請負した工事が遅れがちになりそれが改善される見込みもなかったことによる。

4  被告は、昭和六二年五月ころ、前記乙一六ちらしが、近鉄奈良線学園前駅近くのモデルハウスのオープンに向けて作成されたもので、右モデルハウスのオープンの日付が入っており古くなると使用できないものであったので、新しいパンフレットを作成した。これが甲一三パンフレット「オーセント」である。右パンフレットは、多額の費用を投じて大量に作成した関係上、昭和六三年六月ごろまで使用された。右パンフレットの五、六ページの下約半分には、右モデルハウス全体の外観を示した写真が掲載され、そのやや右上に「日本の風土に合った住まいは、“木”と“土”が基本、と考えます。「オーセント」は、木の温もり、土塗壁の頑丈さを再現した本格木造住宅。画期的な特許工法が、日本の家を大きく変えました。」との宣伝文句が記されている。また、同じページの上約半分には、「オーセント」の特色が六項目に分けて論じられているが、これらの項目及びその内容は、乙一六ちらしでモデルハウスの特色としてあげられているものとほとんど同じであり、そのため、甲一三パンフレットには、前記一3で指摘した、乙一六ちらしにおける本件発明とTM構法を宣伝する文言や「架構体図面」がほぼそのまま(宣伝文言の表現上のわずかな差異を除き)記載されている。

甲一三パンフレットに掲載されている写真のうち、一、二ページの写真(右モデルハウス一階部分の外観を夜に撮影したもの)及び五、六ページの写真(右モデルハウス全体の外観を撮影したもの)は、被告代表者が同道して昭和六二年九月二二日に撮影されており、デザインや原稿が作成されたのは同月二四日であり、印刷されたのが同年一〇月三一日である。また、パンフレット作成費は八六万円、印刷費は九〇万円、パンフレット作成部数は五〇〇〇部である。

しかし、被告は、甲一三の後に作成したパンフレットやちらし(乙二二ないし二四。乙二二は昭和六四年一月に配布されたちらしであり、乙二三は平成二年九月ころ、乙二四は平成四年三月ころに作成されたパンフレットである。)には、本件発明やTM構法について一切記載していない。

一方、近畿ホームビルダーは、本件発明やTM構法を積極的に宣伝している(乙一二)。

四  新工法の開発

証拠(甲九ないし一一、乙五ないし八、検乙一、二、原告本人、被告代表者、弁論の全趣旨)によれば、以下の事実を認めることができる。

1  被告主張の新工法も、軸組構造に関するものであり、接合の方法を単純化することによって部材の加工時間を大幅に短縮すると共に、強度を落とさないままのプレカット及び組み立てのコストダウンを追求するものである。被告が原告に基本的な構想を告げて開発への協力を依頼したが、もともと原告が軸組構造を研究していたこともあり、具体的な技術内容についてはほとんど原告が考えたものである。

2  原告は、昭和六三年一月三一日、被告の依頼により、新工法の柱と梁の接合部の基本モデルを製作した。

3  原告と被告代表者は、同年三月一五日、被告代表者の実兄で株式会社サン・エス・ケイの社長加藤昭二(以下「昭二」という。)と共に、建設省、日本建築センター評定部住宅課を訪問した。

4  原告は、同年五月、被告の近鉄奈良線学園前駅そばのモデルハウスに職業訓練大学の講師を招いて行なわれた新工法の勉強会に参加した。

5  原告は、同年六月二二日、被告が京都大学農学部木質科学研究所に依頼して行なわれた新工法の強度実験に立ち会った。

6  原告は、同年九月二六日、被告が昭二の紹介により大阪見本市会場における大阪木工機械展に新工法のモデルを展示するについて、展示品の製作、展示についての指導を行なった。

7  なお、原告は、新工法について、昭和六三年六月二七日特許出願をし(特願昭六三-一五八八七四。甲九)、平成四年六月五日出願審査請求をしている(甲一〇)。

五  合意解除の成否

1  原告が被告の建築工事現場を撮影した写真である検甲一ないし一一について検討するに、検甲三ないし八においては、直角に接合されている二つの梁のうちの一つの末端に近接してボルト締め孔が穿たれていることが認められ(本件発明の構成要件(一)(2))、ボルト締め孔の穿たれた梁の心部に木繊維方向にボルト孔を有すること(本件発明の構成要件(一)(3))を推認することができ、直角に接合されている二つの梁の間に柱部材があるので、その柱部材が前記梁のボルト孔の対応位置に木繊維方向と直角方向にボルト孔を有すること(本件発明の構成要件(二)(1))も推認することができるが、他の軸組部材や柱部材について右構成要件(一)(3)、(二)(1)を充足するかどうか、この梁を始めとする軸組部材全体について、継手を有しないかどうか(本件発明の構成要件(一)(1))、両末端の両側面に直角に上面から下面に及ぶ縦方面の切欠をつくることによって、上面から下面に亘る断面矩形の縦長の突起部を有するかどうか(本件発明の構成要件(一)(4))、ボルト締め孔を有する梁と接合している柱部材について、両末端及び中間部位に軸組部材の断面矩形の突起部に対応する形状並びに大きさの一ないし四個の切り込みを有するかどうか(本件発明の構成要件(二)(2))は不明であり、また、検甲三、四においては、ボルト締め孔を有する梁と他の梁が柱部材を介して接合されているものでない(本件発明の構成要件(二)全体を欠く)ことが明らかといえる。検甲九ないし一一においては、梁の一つの末端に近接してボルト締め孔が穿たれていることが認められ(本件考案の構成要件(一)(2))、ボルト締め孔の穿たれた梁の心部に木繊維方向にボルト孔を有すること(本件発明の構成要件(一)(3))、この梁と接合する柱部材が梁のボルト孔の対応位置に木繊維方向と直角方向にボルト孔を有すること(本件発明の構成要件(二)(1))も推認することができるが、他の軸組部材や柱部材について構成要件(一)(3)、(二)(1)を充足するかどうか、この梁を始めとする軸組部材全体について、継手を有しないかどうか(本件発明の構成要件(一)(1))、両末端の両側面に直角に上面から下面に及ぶ縦方面の切欠をつくることによって、上面から下面に亘る断面矩形の縦長の突起部を有するかどうか(本件考案の構成要件(一)(4))は不明である。さらに、検甲三、九、一〇においては、ボルト孔が穿たれているかどうか不明の梁についても、他の梁と柱部材を介さずに接合されているものが認められる(本件発明の構成要件(二)(2)を欠く。)。また、本件発明は、特許請求の範囲の記載からみて、軸組部材と柱部材の接合は、軸組部材両末端の突起部と柱部材の末端又は中間部の切り込みを嵌合させて、軸組部材の両末端で行なわれるものと解されるが、検甲五、七、八には、梁の中間部で梁と柱部材が接合されているものが認められる。

結局、原告が検甲各号証において撮影した被告の建築工事現場において、本件発明が実施されているとは認められない。

なお、木造建築の軸組部材や柱部材の接合部分にボルト、ナットで締めつけ補強する工法は本件特許出願当時既に公知公用のものであって(昭和六年六月二〇日実用新案出願公告第七一一一号の組立小屋、昭和二〇年三月八日登録実用新案登録第三五二七六七号の木造トラスの弦材及腹材結合装置、昭和四五年二月一日第一版発行・昭和五五年七月二五日第二四版発行の建築用語図解辞典五九~六〇頁)、本件発明は特許請求の範囲に記載のとおりの特殊な構成にすることによって、「熟練した大工の手作業を必要としない。柱部材を含む構造部材は規格化した寸法に工場で満足すべき精度を以つて能率よく、従って安価に製造出来る。継手は一切使用しない。」(公報2欄23行目~27行目)効果を奏するものであるから、木材の接合部分にボルト・ナットが使用されているからといって簡単に本件発明の実施と認めることができない点に留意すべきである。

2  本件契約締結当時、被告において原告から本件発明の技術内容の指導を受けた者は中井と齋藤の両名しかいなかったこと、両名は本件発明を基本に建物を完成するまでの手順などに工夫を加えた工事法を一応完成し、これを「TM構法」と名付けたことは前記一2認定のとおりである。

3  本件契約後、昭和六二年五月五日付けで、原告と近畿ホームビルダー名義で、本件発明について専用実施権設定契約が締結され、その契約書中で、TM構法については近畿ホームビルダーの所有とされているのは前記二認定のとおりであるところ、原告本人は、右専用実施権設定契約は、実際には昭和六三年ころ締結されたものであり、ただ中井の要望で契約の日付を遡らせたものである旨供述するが、右供述は、右専用実施権設定契約が昭和六二年五月五日に締結されたものであるという原告の従前の主張(平成四年九月二四日付準備書面3項)と矛盾するし、仮に契約の日付を遡らせるのであれば、右専用実施権設定契約における本件発明の実施期間の最初である昭和六〇年六月に遡らせるのが自然である(昭和六〇年六月にはまだ近畿ホームビルダーは設立されていないが、その点は昭和六二年五月五日でも同様である。)。そうすると、右専用実施権設定契約に基づく実施料の振込が実際には昭和六三年七月二七日に開始されている点で若干の疑義はあるが、右専用実施権設定契約は、中井及び齋藤が被告会社から独立して近畿ホームビルダーを設立する予定であったことから、近畿ホームビルダーにおいて本件発明やこれを利用したTM構法を実施できるように、原告と中井の間で、契約書(乙四)の日付のころに、近畿ホームビルダーの開業準備行為として締結されたものと認めるのが相当である。

4  以上1ないし3の事実を総合すれば、被告会社で本件発明及びTM構法を実施する能力のある中井及び齋藤が被告会社から独立して近畿ホームビルダーを設立することが決まってからは、被告会社において、近畿ホームビルダーに下請工事を発注した分を除き、本件発明を実施していないことを推認することができ、これは、近畿ホームビルダーが本件発明について専用実施権を取得することに伴い、昭和六二年四月末日ころに本件契約が合意解除されたことによるものと認めることができる。

5  原告は、本件発明は軸組構造に関するものであるから、大工が理解すれば実施できるのであり、被告代表者加藤が本件契約により第一契約の実施料の値下げを図ったのも、本件発明の内容を知り、その後も実施することを前提としてのことであることは明らかであると主張する。たしかに、本件発明は「この発明による軸組構造とこの発明による柱部材及びその他軸組部材との接合方法によるときは、木質建造物の軸組は極めて容易、且つ迅速に実施出来る。」(公報5欄28行目~6欄3行目・甲一二)、「その上更に熟練技術を要することなしに未熟な技術によつても建造物の均一化を達成することが出来る。」(公報6欄9行目~11行目・同)とされているが、これを実用化して建物を建築するには一定のノウハウを要するものと考えられ、それがたとえばTM構法である。そして、被告において、本件契約を締結した時点では、本件発明をその後も実施することを前提としていたとしても、実際にはその実施は被告会社から独立して近畿ホームビルダーを設立する予定であった中井や齋藤に頼らざるを得ないのであり、近畿ホームビルダーが専用実施権(それが実質的には通常実施権と変わらないものであったとしても)を取得することになれば、被告が本件発明を利用した工法で家屋の建築をする場合には、近畿ホームビルダーに下請けに出せば済むことであり、被告が実施料を支払って本件発明の実施権を保有し続ける利益はないから、原告と近畿ホームビルダー名義の専用実施権設定契約が締結される見込みが判明した時点で本件契約を合意解除するに至ったことも不自然ではない。

6  原告は、昭和六二年一〇月末日に被告の販売促進用に作成されたパンフレット「オーセント」(甲一三)に本件特許権に関する記載があることを理由に、被告が本件発明を実施していたことは明らかであると主張する。しかし、甲一三パンフレットにおける本件特許権に関する記載は、中井が被告会社の代表取締役であった当時に発注したちらし(乙一六)に記載されているところとほとんど同じであり、また、本件発明が、中井や齋藤によらねば実施困難であるTM構法と区別せずに説明されていること、当時被告と近畿ホームビルダーは業務提携して、被告が営業活動を中心に行い、近畿ホームビルダーに下請工事を行わせる予定であったこと(受注は被告、工事は近畿ホームビルダーとの計画)、被告が甲一三パンフレットの後に作成したパンフレットやちらし(乙二二ないし二四)には、本件発明やTM構法について一切記載していないことからすると、右記載は実際に本件発明を実施するのは近畿ホームビルダーであることを予定したものであると認められ、右記載をもって被告による本件発明の実施を推認することはできない。

また、原告は、被告が、本件発明の工法により建築したモデルハウスについて、建築途中をビデオ撮影しており、そのビデオは、下請工事業者に対する研修のために用いられているし、本件発明を利用した建築工法は模型化され、平成三年ころに工法を宣伝するものとして展示されていたと主張する。しかし、右ビデオ撮影がされたことを認めるに足りる証拠はない。また、本件発明を利用した建築工法すなわちTM構法が模型化され、その模型が平成三年ころも右モデルハウスに置かれていたのは事実であるが(甲一九、原告本人、被告代表者)、模型は中井が被告会社に在籍していた当時に製作されたものであり(被告代表者)、中井の独立後もそれを積極的に利用して被告の営業活動が行われていたとは認められない。

甲一三パンフレットの記載や、被告の近鉄奈良線学園前駅そばのモデルハウスに置かれていたTM構法の模型のもつ意味は右の程度のものであるから、これらの事実をもって、本件発明を使用した工法により建築することが、顧客と被告の契約内容に含まれていたということもできない。

7  本件給付は当初一か月二〇万円が支払われていたが、これは本件契約における一年目の約定実施料と同額であるから、一見、本件契約が昭和六二年四月末ころに合意解除されたと認めるのに障害となりそうである。

しかし、本件契約によれば、実施料の支払義務の発生は昭和六二年四月である(第三条一項)のに、本件給付は昭和六二年八月から支払われているし、本件契約によれば、実施料は昭和六三年一月から二二万円になるべきところ、被告は原告に対し、昭和六三年四月三〇日から二四万円を支払っているのであり、本件給付の内容が本件契約に定める実施料と一致していない。また、原告は、四でみたとおり、新工法の開発について被告に協力しており、一方、被告が本件発明を実施していないと認められることからすれば、本件給付はむしろこのような技術協力に対する顧問料と解することが自然であり、証拠(乙九、被告代表者)によれば、原告と被告は、右新工法の開発について、昭和六二年八月三日ころ、原告は被告に顧問として協力し、被告は原告に一か月に二〇万円の顧問料を支払うことを約したことが認められる。

なお、本件給付のうち、昭和六三年二月二九日及び同年三月三一日の給付は、それまでの月よりそれぞれ約一五万円多いが、これについて、原告本人は、CADシステムのソフトを収納した固定ディスクの交換費用であると供述する。しかし、証拠(被告代表者、乙二五の1)によれば、CADシステムのソフトを収納した固定ディスクが壊れたことに伴う修理費用三〇万円は、CADシステムソフトの売主でありソフトのバックアップシステムを所有していたロコシステムに直接支払われたものと認められ、右の従来の額を超える給付については、四2の、新工法の柱と梁の接合部の基本モデルの製作費用であると認められる。

また、原告は新工法について特許出願や出願審査請求をし(甲九、一〇、原告本人)、新工法を株式会社インターナショナルサーキュラーコーポレーションに売り込んでいる(甲一七、乙八、原告本人)。原告は、このことをもって、新工法については、被告は関与せず、原告が単独で開発したもので、その権利が原告に独占的に帰属することが予定されているから、新工法について被告が原告に顧問料を払うはずはないと主張するもののようである。しかし、新工法についての特許出願や株式会社インターナショナルサーキュラーコーポレーションヘの売り込みの事実は、原告が新工法について自分の貢献が最も大きく、被告の役割は取るに足りないもので、自分が特許権等の利益を得るのが当然であると考えていたことを示すに過ぎず、これらの事実があったからといって、本件給付の趣旨が顧問料であることを否定することはできない。

8  以上のとおりであるから、本件契約の合意解除を主張する被告の抗弁は理由があるというべきである。

六  結論

よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。

(裁判長裁判官 庵前重和 裁判官 小澤一郎 裁判官 本吉弘行)

図面(六)

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図面(一)

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図面(二)

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図面(三)

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図面(四)

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図面(五)

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<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告

<12>特許公報(B2) 昭57-37739

<51>Int.Cl.3E 04 B 1/266 1/40 識別記号 庁内整理番号 6434-2E 7228-2E <24><44>公告 昭和57年(1982)8月11日

発明の数 1

<54>木質建造物の軸組構造並びに軸組部材の接合方法

<21>特願 昭49-89981

<22>出願 昭49(1974)8月6日

<65>公開 昭51-19327

<43>昭51(1976)2月16日

<72>発明者 寺田茂

高知県吾川郡春野町西分82の1

<71>出願人 寺田茂

高知県吾川郡春野町西分82の1

<74>代理人 弁理士 砂川五郎 外1名

<56>引用文献

登録実用新案 352767(JP、Z1)

実公 昭6-7111(JP、Y1)

実公 昭42-9936(JP、Y1)

<57>特許請求の範囲

所望の柱間隔に対応する長さで継手を有せず、両末端に近接してボルト締め孔を有し、心部に木繊維方向にボルト孔を有し、両末端の両側面に直角に上面から下面に及ぶ縦方向の切欠をつくることによつて、上面から下面に亘る断面矩形の縦長の突起部を有する軸組部材、即ち土台、軸桁及び梁が上記ボルト孔の対応位置に木繊維方向と直角方向にボルト孔を有し、両末端及び中間部位に上記軸組部材の断面矩形の突起部に対応する形状並びに大きさの1~4個の切り込みを有する柱部材を介して、両締めボルトでナツト締めすることにより、接合されていることを特徴とする土台、軒桁並びに柱よりなる木質建造物の軸組構造。

発明の詳細な説明

特許請求の範囲1記載の発明は、木質建造物の軸組構造に関する。

従来木質建造物の軸組は普通土台、梁及び軒桁として使用されるべき軸組部材に墨み付け刻みを行つたのち、腰掛のり継ぎ等の方法によつて該部材をその長さ方向に接合し、その接合部位とは離れた部位における部材の一面にその内部にまで彫り込んだほぞ穴を穿つてそのほぞ穴に同様に墨み付け刻みのほどこされた柱部材のほぞを差し込むことによる柱部材と土台桁等の軸組部材との接合によつて行われて来た。

この様な従来の軸組構造は高度の技術を具へ熟練した大工による墨み付け刻みの手作業に依存するものであり、その省力は時代の要請となつている。しかし乍ら従来構造では、軸組用部材の刻み工程を工場での量産に移すことが出来ない。その上従来構造では単に墨付刻みの手作業そのものの困難や製品の不均一性並に継手並にほぞによる柱部材と土台、梁等のその他軸組部材との接合に由来する建造物自体の歪み易さの故に、建前時においてはゆがみなおしの様な余分の労力を要する許りでなく、建造後の強度保持のために種々の補強材による補強が必要となるという欠点も見逃すことが出来ない。

本発明は従来方法による上述の不利欠点を改善した新規な軸組構造を提供しようとするものである。

即ち、本発明構造の軸組では熟練した大工の手作業を必要としない。柱部材を含む構造部材は規格化した寸法に工場で満足すべき精度を以つて能率よく、従つて安価に製造出来る。継手は一切使用しない。柱部材とその他の軸組部材との接合は、専ら軸組部材の両末端で行われるから、顧客の注文する木質建造物の間取り設計に応じて、規格化した寸法の軸組部材を選別したのち、建設現場に輸送しさへすれば現地における大工による墨入れ刻みは必要とせずしてそのまゝで軸組が実施出来る。しかも使用軸組部材の品質寸法の適切な規格化により古来の寸法による洋風建造物は勿論和風建造物でもその部屋数の多少間取りの複雑さに拘りなく、軸組部材の選別に何の困難も伴うことなしに顧客の注文に応じた住宅でも有利に建設することができる。この意味において本発明による軸組工法はフリーサイズ工法と呼称することができる。

本発明になるフリーサイズ工法にあつては、殊に土台はその一端で基礎の上に立つている柱部材を挾んで凹凸で嵌合された上、両ねじボルトで締めつけられる様になつているから、従来工法で行われて来た様に土台胴着において、土台が建物の重量や風圧加量による変形を起す虞れがなく、従つてその様な土台変形に由来する戸障子の開閉困難の様な不利を起すことが全くない。

以上の説明からも明かな様に、本発明のフリーサイズ工法による軸組構造を採用するときは本質建造物を建築するための工期は著しく短縮出来る許りでなく、時間当りの労賃も低減出来材料も節約出来るため建築費も全体として極めて安くなる。

こうして熟練技術者によらずして日本古来の形式で設計どおりに堅牢でしかも安価且つ均質な木質建造物が建造出来るから、単に建売り住宅に適用して利点が多いだけでなく、個人の好みに応じた注文建築を行うためにも極めて有利である。

本発明者は本発明のフリーサイズ工法と称する軸組構造を実用化するために、柱部材と土台、梁、貫、軒桁等の軸組部材との接合方法。

即ち、特許請求の範囲1に記載の発明による軸組構造を実施する際に使用すべき柱部材と土台、梁、貫及び軒桁等の軸組部材との接合方法を更に研究し、本発明の軸組構造を完成した。

以下図面により柱部材とその他軸組部材とを接合するための本願方法を説明する。

第1、第2、第2a、第3、第3a、第4、第4a及び第4b図には柱Aの末端を挾んで置かれた2本の軸組部材B、B’及び柱Aが示されている。土台及び梁に使用される軸組部材B、B’の両末端10及び12の近接部位には部材の上面13にそれぞれ1個のボルト締め孔14及び15が設けられている。また末端には上面から下面に及ぶ縦方向に切欠きをつくることによつて該部材上面から下面に亘る縦長の突起部21及び22が形成されている。末端10及び12の断面とボルト締め孔14及び15との間には、部材の心部に縦方向即ち木繊維方向にボルト孔23が設けられている。他方、柱部材の両末端24及び25及び中間部位26にはそれぞれ突起部21及び22に対応する大ききの切り込み27が設けられる。切り込み27の数は1部位に1個~4個であり、2個以上の場合はその奥の末端で互につながつている。柱Aを周んで最大4本の、例えば土台である軸組部材を基礎32の上におき、上記突起部21及び22と切り込み27とを嵌合させることが出来る様になつている。

柱部材の末端24及び25及び中間部位26(第5図参照)には、柱部材に結合すべき軸組部材のボルト孔23に対応する位置に必要により柱部材の横方向、即ち木繊維と直角方向にボルト孔28及び29が設けられている。即ち柱Aを介して2本の土台等となる部材が相互に直角方向に結合される場合は、柱部材の横方向に2本のボルト孔を設ける必要があり、そのボルト孔はその部位において落差を有し、2本の両ねぢボルトの差し込みに差障りが生じない様になつている。そうして両ねぢボルトの1端はボルト締め孔で、他端はボルト締め孔に対立する柱部材の測面上でナツト31により締めつけられる。また柱部材Aを介して2個の軸組部材が直線方向に連結される場合(第2及び第5図参照)は、両ねぢボルトは相対立する部材のボルト締め孔においてナツト31で締められるが、柱部材にはボルト孔は必要でない。

柱部材の末端では上述した様に土台となる部材や軒桁となる軸組部材及び梁となる軸組部材が本発明の方法により接合されるが、その中間では第5図に示される様に貫との接合が行われる。この場合はボルト締め孔14及び15は貫の片方の側面に設ける。

本発明の貫では従来のカベ下地を保持するための目的のみではなく、軸組の強度を増大するためにも利用されている。そうしてその他の軸組部材同様に両締めボルト30により締めつけられる様になつているから、本発明者はこの様な機能を有する貫を従来の貫と区別するため力貫と名付けることにした。

両締めボルトの装填は先づ土台、梁、力貫、軒桁等の軸組部材にボルトを挿入したのち、その先端にボルト孔においてナツトをほどこし、ボルトの他端を柱部材の側面においてナツトで締めつけるか、場合によつては更に別の土台又は梁等に挿入してそれら部材に附された別のボルト孔でナツトによつて締めつける。

第6a及びb図はこうして土台、梁、力貫、軒桁等を本発明の結合方法で結合した、本発明の木質建造物の軸組の一部構成を示す平面図と斜視図であり、第7図は従来工法による土台の継手及び柱と土台との接合方式を示すもので、本発明の方式との相違は顕著である。

以上説明した様に本発明の接合方法では、柱部材と土台、梁等のその他部材との接合は工場に於て繊維により精密に調整せられた均質な切り込みと均一な突起部とによつて施行現場で簡単に嵌合できる許りでなく、両じめボルトにより締めつけられるから、この方法により軸組された木質建造物は安定性が優れ、ひずみが少なく、ひずみなおしの様な余分の操作を必要とせずして、全く均一な建造物をつくることが可能となる。

これに反し、従来工法に於ては第7図に示される様に、例えば、土台や梁は建築現場に於て熟練した建築技術者によつて継手で接合され、土台の上面にほぞを穿つて柱を挿入したり別の土台をはめ込んだりしなくてはならなかつたから、大量生産によるコストダウンは到底不可能であつた。

また同じめボルトは土台、梁等の軸組部材の木繊維方向に締めつけられており、また柱部材は木繊維方向と直角方向に締めつけられてはいるが、土台、梁等のその他部材と極めて広い面積を保有する胴着きで装着しているから、長年使用したのちもゆるみを生じる様なことがない。

この発明による軸組構造とこの発明による柱部材及びその他軸組部材との接合方法によるときは、木質建造物の軸組は極めて容易、且つ迅速に実施出来る。その上各部材は工場に於て量産出来るから建設費が安価である。また、従来工法の様に軒桁に継手がないこと、土台に柱を介しての建造物の負荷がかからないから建造物に歪が生じないこと、力貫が附加的に用いられていることの故に強風や地震に対する抵抗性の大きい極めて堅牢な木質建造物をつくることが出来る。その上更に熟練技術を要することなしに未熟な技術によつても建造物の均一化を達成することが出来る。

図面の簡単な説明

第1図は本発明による柱部材と土台となる部材との接合を示す斜視図、第2図は同様の部材の下端接合状態を示す縦断面図、第2図aは第2図の接合状態の斜視図、第3、第3a、第4、第4a及び第4b図は同様柱部材と梁及び土台となる部材との接合を示す斜視図で、第3図は完成した状態を、第4、第4a及び第4b図は接合作業途中の状態を示すものである。第5図は同様柱部材と力貫部材との接合を示す側面図であり、第6、第6a及び第6b図は、本発明の軸組方式を示す断面及び斜視図である。第7図は参考図で、従来工法による土台の継手及び土台と柱との接合状態を示す斜視図である。

Aは柱部材、B及びB’はそれ以外の軸組部材、30は両締めボルトである。

第1図

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第2図

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第2図(a)

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第3図

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第3図(a)

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第4図

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第4図(a)

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第5図

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第4図(b)

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第7図

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第6図

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第6図

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特許公報

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